先般、郷土史研究家の忽那様から、坂本屋へ正岡子規の『伊予九谷絵図』を、ご寄贈いただきました。 この『伊予九谷絵図』は、子規さんが主筆する、「文芸新聞・小日本」の俳句欄に、挿絵を担当する「中村不折」に、縮尺画を描かせるため、子規さんが病の床に在って描いた原画です。 子規さんは、松山中学3年(15歳)の時4人の友人と、また東大入学前(24歳)友人と共に、再度久谷の遍路道を久万に旅をしています。
子規さんは故郷を愛し、何百という、故郷の俳句を読んでおられます。若くして病を得てより、「中村不折」に絵の手ほどきを受け、病床に在って、気分転換に絵を描き始めます。床に臥しての限られた空間、対象は、果物・玩具・鉢植えの花、そして縁側越しの季節の草花でした。 その様な子規さんが描いた、稀有な風景画は、故郷を読んだ俳句の新聞挿絵『伊予九谷絵図』の原画でした。病床に在るも、「伊予九谷へ旅せし時の記憶により」と、幼き日の脳裏に焼き付いた景色を描いています。
この風景画は「伊予九谷へ旅せし時」と、明確に描かれた場所が明示されている。この『伊予九谷絵図』を飾る場所は、江戸・明治時代の面影を残し、子規さんも所縁の遍路道。「遍路宿坂本屋」が、最も相応しいとの忽那様の思いにより、今回ご寄贈いただきした。 遍路宿坂本屋は、主に歩き遍路さんのお接待処として活動しています。山の緑や紅葉・静寂・そして一服のお茶と、江戸明治の空気、遍路宿坂本屋の歴史を思い出に、お持ち帰り頂ければ幸いです。 子規さんの『伊予久谷絵図』を多くの方に見て頂き、遍路宿坂本屋が、お遍路さん以外にも認知され、多くの方に親しまれる場所になればと、坂本屋運営委員会会員一同は願っております。
興味のある方は、一度遍路宿坂本屋に、足を運んでみてください。忽那様からいただいた『伊予九谷絵図』の詳細資料もありますので、解説も交えて見てほしいと思います。